【14冊目】クリエイターの方必見!著作権や商標権・特許を守るということ「それってパクリじゃないですか?~新米知的財産部のお仕事~」(奥乃桜子)

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あらすじ

中堅飲料メーカーに勤める亜季は、自社の特許や商標を権利化する知的財産部に異動になった。知財ド素人の亜季は上司の北脇にしごかれながらも、親友の服飾ブランドの商標乗っ取り事件やパロディ商品の訴訟騒ぎなどの案件を、悪戦苦闘しながら乗り越えていく。そんな時、社運をかけて開発していた新製品のお茶の技術が、ライバル会社から特許の侵害を通告されて!?

裏表紙より

☆こんな方におススメ☆

*クリエイターの方やクリエイティブ部門に関わっている方

*お仕事小説が好きな方

大切なのに意外と知らない「知的財産権」とそれを守る人たち

僕もこの小説を読んで、改めて考えなおしたのですが「制作したものの権利や制作過程を守る」=知的財産権、というのは大切なことでありながらあまり注目されていないように思います(一般的には何かトラブルがあった時に持ち出されるイメージ?)

クリエイターのはしくれとしてフリーランスフォトグラファーをしている自分は、そういった権利を侵害しない・されないように自身でチェックしているため、一般の方より触れる機会が多いのですが、普通に生活しているとあまり意識的に関わることは少ないのではないでしょうか。

しかし実際は、身の回りにあるいろいろなものに知的財産権が関わっていて、毎日登場する新製品は既製品の権利を侵害しないように綿密にチェックされ、場合によっては権利の奪い合いや多額のライセンス料を支払って製造するなんてことも頻繁に起こっているそうです。

この小説はそんな自社の知的財産権(商標権や特許、著作権)を守るため、中堅飲料メーカーの「知的財産部」に配属されてしまった知的財産権ド素人の亜希が四苦八苦し、時には失敗しながらも成長していく物語です。

パロディorパクリ?、リスペクトor侵害?

本作中にも出てきますが、知的財産権関係で世間で騒がれた例として・・・・

オリジナル「白い恋人」 ⇔  パロディ「面白い恋人」

オリジナル「フランクミュラー」  ⇔  パロディ「フランク三浦」

そのほか、PUMAのロゴマーク事件なんて言うのもありました。

これはほんの一例ですが、一見パロディで済まされそうな商品名でも大きな裁判で争っている例はたくさんあります。

やっぱり世間では、変わった事件、野暮、ネタと受け取られる。パロディ商標の訴訟は、訴えた側の過剰反応と多くの人には感じられるんだろう

作中P162

中には「パロディ」としてお笑いで済まされるもの、オリジナルの製作元が認めているものもあるのでしょうが、全ての製品の制作には多くの人が関わり、血のにじむような技術開発や莫大な予算が投入されることが多いのも事実です。

商標とは一見すると単なる名前ですが、そこには会社のブランドを背負ったイメージや製作者の努力が込められていることも多く、安易にパロディにされることでそのイメージが崩されたり、商品価値が貶められたりすることもあります。

思いを込めて開発した製品であったり、技術であったりすると感情的にも「真似されたくない」「今後、パロディにしないでほしい」と裁判に訴える会社や個人も出てくるでしょう。

この本を読んで、「みんなの努力の結晶を守るのが私たちの仕事です!」という本のキャッチコピーがすっと胸に落ちたような気がしました。

クリエイティブ活動に関わる人や全ての人に読んでほしい1冊

本作は、難しくなりがちな特許や商標権、著作権の仕組みを分かりやすく解説しながら、実際の事例も踏まえて時にはおかしく、時には真面目に描いてくれています。
クリエイティブ関係に関わっているみなさんには「ああ、あるある」と共感してもらえると思いますし、普段あまりこの分野に触れない方もわかりやすい本だと思います。

まだまだ日本は知的財産権に関する理解や議論が十分に行われていないので、この1冊がそんなきっかけにもなればいいなとも期待します。


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