【10冊目】金沢の街を舞台に繰り広げられるご飯と恋愛と青春の心温まるストーリー「君が今夜もごはんを食べますように」(山本瑤)

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あらすじ

家具職人をめざし、修行を積んでいた倉木相馬。良い家具を作るには人間について理解していなくてはならないと考える師匠に、家具職人以外の仕事を経験するよう言われ、女友達の営む茶房で働くことに。もともと料理が得意だった相馬は、茶房での仕事に喜びを見出し始めて…。優しすぎる男と壊れかかった女たち。心と身体に愛の滋養、じんと沁みる金沢ごはん物語…!

Amazonより

☆こんな方におススメ☆

*金沢にこれから観光に行きたい方、知りたい方

*料理をするのが好きな方、他の人が料理をしているのを見るのが好きな方

*ちょっとほろ苦い恋愛系のお話を読みたい方

金沢の街を舞台にほろ苦い青春&恋愛、ときどき料理のこと

今では有名観光地として人気のある金沢・ひがし茶屋街周辺をメインの舞台に、金沢の街なかの様子が描写されています。
金沢周辺に住んでいる方や訪れたことがある方は、情景が頭に浮かんできそうです。

食事が美味しいことでも知られる金沢ですので、作中には郷土料理の治部煮をはじめ、加賀野菜や新鮮な魚介などを使ったメニューが出てきて、何となく料理がしたくなるor食べに行きたくなるかもしれません。

主人公の相馬はふとしたきっかけで、金沢にある家具工房「ときわ」の職人・楡崎の作るテーブルに一目惚れをし、飛び込みで弟子入りをしました。
「良い家具を作るには人生経験を積み、人間について深く理解していなくてはならない」と師匠に教えられ、家具職人以外の仕事を体験するよう申し付けられます。
そして女友達の小梅がやっている「茶房こうめ」で働くことになり、 料理人見習いの純平と一緒に店を手伝うことになります。

ほっこりするエピソードも苦いエピソードも

わりと序盤から中盤にかけては「茶房こうめ」や家具工房、金沢の街の様子を描いたほっこりしたエピソードが続きますが、主人公・相馬やその恋人・沙季、同僚の小梅や純平の過去や家族模様、背負っているものの重さが明らかになるにつれ、ほろ苦く重いエピソードも少しずつ語られ始めます。

相馬が料理が得意だった背景には母子家庭で育ち、小さいころから料理をせざるを得なかったという家庭環境もありますし、小梅や純平は金沢では有名な料亭や名家の出身ということで親や家との関係には複雑なものがあります。

そして恋人の沙季をめぐる恋愛模様は複雑かつ少し怖いところもあり、今作がほのぼのとした雰囲気だけではなく、将来を真剣に模索する若者たちの葛藤の日々や成長することの大変さを描いた人間ドラマであるという一面ものぞかせます。

食事をすること、そして食卓から生きることが描かれる人間ドラマ

物語から中盤から終盤に差し掛かると、相馬は師匠から1つの大きな課題として高級な木材を使って自分の納得のいく家具を作ることを命じられます。
そこで彼が選んだのが「食卓」(テーブルと椅子)でした。

それまで相馬は家具づくりのセンスがありながら、師匠に認めてもらえず自分でも納得のいったものを作れていませんでした。
その大きな要因が相馬が作ったものは「作品」に過ぎず、人がどうやって使うか・使った人がどう思うのかを考えた「道具」としての家具になっていなかったからでした。

食卓というのはそれを囲む人たちの思いや生活、関係などさまざまなものがにじみ出ますし、そこで食事をすることでお互いが理解しあったり、生活する力を得たりする場です。
最初はそれを実感できなかった相馬でしたが、料理を通して多くの食卓と向き合い、人と触れ合う中でそのことを理解していきます。

感想

自分自身が金沢に長年住んでいることもあり、地理的なことや文化も分かっているのでやはり読みやすい1冊でした。
もちろん街の様子などがしっかりと描写されているので、金沢をこれから知りたい方や全く知らない方も読みやすくなっていると思います。

少し難を言えば、恋人のキャラクターと境遇が少し強すぎたのでほっこりした部分とほろ苦い部分のギャップがなかなか理解しづらいかもしれません。
(伏線や背景描写と言う意味では最後にしっかりまとめられているとは思います)

題名の「君」というのは基本的に恋人のことを指しているとは思いますが、全体的な雰囲気などから見ると全ての人たちに向けられた言葉なのかもしれません。
そうすると「食事や食卓を介して描かれた若者たちの葛藤と青春のストーリー」かなと個人的には感じています。

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