【8冊目】映画「サムライマラソン」原作☆日本のマラソンの発祥と言われる物語を痛快に描いた「幕末まらそん侍」(土橋章宏)

「サムライマラソン」として映画化された物語の原作。
日本におけるマラソンの始まりとされる幕末の「安政遠足」(「えんそく」ではなく、「とおあし」と読みます)を題材にしたコメディーかつ少し感動するお話です。

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あらすじ

作品は5章に分かれ、それぞれ別の人物を中心に描いています。最初はそれぞれ別の独立した内容かと思っていましたが、何せ小さな藩の中での出来事なのでそれぞれの章の主人公が関係しあい、別の章にいい感じに登場するのが楽しいです。自分の主人公パートではちょっと抜けていたりするのに、他の章で登場するとけっこうカッコよかったりとか。

美しい姫をめぐりライバルとの対決に燃える男。どさくさ紛れに脱藩を企てる男。藩を揺るがす隠密男。賭けの対象にされた男。自らの余命をかけて遠足に参加する男。
それぞれがそれぞれの事情を背負って、侍たちが必死に走ります。

コメディだが面白いだけで終わらないホロリとくる展開

遠足では「1位になったものには褒美を与える」となっているので、当然、各参加者はいろんな作戦とか裏技を使おうとしますが、まあ当然いろんなトラブルやドタバタが起きますよね・・・
江戸時代の時代背景をしっかりと残しつつも、今の人たちも考えそうなあの手この手を考えるお侍さんたちが面白いです。

時代は江戸時代のことを描いていますが、上司と部下の人間関係の難しさ、男と女の人情劇から地方と都会の格差・働き方の問題と言った社会問題まで現代に通づるような描写が多数描かれています。
「あ~、それ分かるわ~」とお侍さんに共感してしまいました。

背景は江戸時代ということもあり、途中には斬り合いや暗殺と言った暗い描写も出てきますが、基本的にコメディタッチで読みやすいと思います。
ラストはやや唐突で一気に進み過ぎる感じはありますが、感動的な流れから最後はしっかりとオチをつけて爽やかな印象で終わるあたり、作者の構想力の素晴らしさを感じます。

ぜひ映画も小説も合わせてお楽しみください

「サムライマラソン」の動画視聴はこちら

小説を読んで面白かったので、映画も見てみましたが小説と映画でかなり内容に差があります。映画の方がシリアスで熱い展開が多いでしょうか。

「行きはマラソン、帰りは戦」

というキャッチコピーも秀逸ですね。

これから映画を先に見られる方が多くなるかもしれませんが、ぜひ小説での原作を読むことをおススメしたい1冊です。
魅力的な各章の主人公が絶妙なバランスで関係しあい、物語を進めていく面白さを味わえるのは小説ならではだと思います。


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