【16冊目】箱根駅伝に創立1年目で挑む学生たち。仲間たちの絆と「強さの意味」を描く青春小説「風が強く吹いている」(三浦しをん)【映画・アニメ・漫画化作品】

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あらすじ

箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。

文庫本より

☆こんな方におススメ☆

*スポーツ好きな方(特に団体競技)

*青春時代の心の変化や仲間の絆に関心がある方

駅伝部創立1年目で箱根駅伝本戦に無謀な挑戦

本作は正月の風物詩となっている「箱根駅伝」に挑む創立1年目の大学駅伝部を描く物語です。

かつて有名ランナーとして名を馳せていた主将の清瀬灰二がある日、天才ランナーで入学生の蔵原走(くらはら・かける)と出会うことから話は始まります。
実は清瀬は足の負傷のため全力で走れなくなった過去、蔵原は部活動内のいざこざで大会に出場できなかった過去を持つという「才能を持ちながら、環境に恵まれなかった」2人です。

その2人が学校寮兼駅伝部の拠点となる竹青荘のメンバーたちを集め、箱根駅伝を目指すことになります。とは言っても、メンバーたちは駅伝経験はおろか陸上経験も無いメンバーがほとんどで、その挑戦は無謀としか言えません。

結果的には指導者として有能な清瀬主将の指導とメンバーの努力もあり、箱根駅伝予選会を突破。本選でもとんでもない偉業を達成するのですが、この「創部1年目の素人軍団が箱根駅伝で偉業」という内容が読者から賛否両論を呼んでいるそうです。

この内容が果たして不可能なものなのか、駅伝未経験の私には判断がつかないのですが、毎年の箱根駅伝のハイレベルさを見ていると限りなく現実離れに近いものなのだとは予想できます。
ただ、この現実離れ感は筆者も十分に予想しており、だからこそこのテーマ設定の中で登場人物の心の動きや葛藤に主題を置いているように感じます。

「速さ」よりも「強さ」。本当の絆とは何か

駅伝やマラソンは数あるスポーツの中でもシンプルな部類に入ります。「走る」というシンプルな行動の中で、一定の距離をいかに速く走るかのみが勝敗につながります。私はかつて野球をやっていましたが、野球が各プレーヤーの連携が重要なのに比べ、駅伝は各個人がいかに早いかだけが勝敗に関係します。雑な言い方をすれば箱根駅伝の場合、10人の早いランナーを集めれば勝てる可能性が高くなります。

ただそこは人間が行うことですから、いろいろな要因が勝敗の分かれ目になってきます。例えばその日の体調やレース中の他のチームとの駆け引き、自らの心理状態などなど。それが本作で言われている「強くあること」の1つの意味です。

さらに駅伝では他のスポーツには無い「襷をつなぐ」という至上命題があります。チーム内にどんなに速い選手が多くいても、襷が途切れてしまえばゴールとならない。箱根駅伝ではそのうえに繰り上げスタートという制度もあるので、各区間ごとに一定の速さで襷をつないでいかなければいけないという縛りもあります。

本作では「速さ」を追い求め続け、タイムを出せないチームメイトに苛立つ蔵原の姿とチーム全体としての「強さ」を信じてチームメイトに接する清瀬主将の姿が対比で描かれていきます。
そして終盤の箱根駅伝本戦では、蔵原が「強さ」の意味を理解するのと同時に、チームメイトは蔵原が背負ってきた「速さという悲しさ」を知ることになり、チームとしての絆をいっそう強めます。

「走、おまえはずいぶん、寂しい場所にいるんだね」

ユキ

映像が美しいアニメ版、心理描写が楽しめる小説も合わせて

実は私が本作を小説で読んだのはアニメ版を見てからです。やはりアニメとなると、スピーディーさや映像の分かりやすさも必要なため、細かな心理描写や背景の一部を割愛せざるを得ないと思ったからです。

そしてアニメ版のアニメーションはかなり秀逸です。蔵原の速さを表現する周りの景色が流れていく様子、心の中の葛藤さえもその映像表現は一見の価値ありです。

個人的にはアニメの映像の背景にあった心理描写を小説で確認でき、逆に小説の「この表現がこういうアニメーションになったのか」と感じることができたので、アニメと小説の同時視聴がかなり良かったです。

アニメ

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