2019年にタイトル買いして面白かった小説7冊

先日、いつも使っている「読書メーター」の方を見ていたら、「日本タイトルだけ大賞」という面白そうな企画をやっていました。

第12回 日本タイトルだけ大賞
メディアで話題沸騰!本のタイトルの素晴らしさを表彰する「タイトルだけ大賞」が今年も開催! 2019年最も秀逸な書籍タイトルに輝くのは?|トップページ

今年ですでに12回を数えるそうですが、タイトル買いすることが多い自分が知らなかったのは申し訳ない・・・

ということで今日は「日本タイトルだけ大賞」にあやかって、2019年にタイトル買いして面白かった小説7冊をまとめてみたいと思います。

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僕が僕をやめる日(松村涼哉)

「死ぬくらいなら、僕にならない?」――生きることに絶望した立井潤貴は、自殺寸前で彼に救われ、それ以来〈高木健介〉として生きるように。それは誰も知らない、二人だけの秘密だった。2年後、ある殺人事件が起きるまでは……。
 高木として殺人容疑をかけられ窮地に追い込まれた立井は、失踪した高木の行方と真相を追う。自分に名前をくれた人は、殺人鬼かもしれない――。葛藤のなか立井はやがて、封印された悲劇、少年時代の壮絶な過去、そして現在の高木の驚愕の計画に辿り着く。

Amazonより

生活苦から自殺寸前に追い込まれた主人公が、他人の名前を与えられることで救われたと思った矢先、殺人事件の容疑者として追われ続けるという絶望的な幕開けでした。
そしてその容疑を晴らそうと高木本人を探し、自分の過去を遡るたびに隠されていた真実が明らかになってきます。
他人の人生を与えられた人間と他人に人生を与えた人間が導き出した答えとはなんだったんでしょうか?

爆破事件を起こした15歳の少年のたたかいから、少年犯罪の闇を描いた「15歳のテロリスト」で注目を集めた松村涼哉先生が描く社会派ミステリー第2弾。
2作とも衝撃的なテーマ設定と絶望的な状況からスタートしつつも、丁寧に問題の背景を拾いながら人物の心情を紡いでいく手法は見事です。

おしい刑事(藤崎翔)

推理力抜群で華麗に犯人を追い詰めるのに、いつも最後の最後で詰めが甘く、イケメンの後輩・横手に手柄をとられてしまう押井敬史巡査長。そんな彼を周囲は愛ある上から目線で“惜しい刑事”と呼ぶ。完璧に事件を解決し、不本意な呼び名を返上すべく奮闘する押井。でも、やっぱり今日もまた……。 
日本一残念な刑事が挑む6つの難事件。腹筋崩壊の連作ミステリ。

Amazonより

かなりのコメディ臭のするタイトルに誘われるように買ってしまった1冊です。

かなり鋭い洞察力と推理力を持っていて、途中までいい感じに捜査を進めていくのに犯人や動機当ての最後の段階であと一歩詰めが甘い。
後輩や上司に見事に手柄を横取りされ、周りだけが出世していくというオモシロ悲しい残念ストーリーです。上手く手柄をかっさらおうと、周りの刑事や上司が押井刑事を途中まで盛り上げていくのに最後の最後に手のひら返しなのが申し訳ないけど笑ってしまいました。

続編の「恋するおしい刑事」では美人ヒロインとして登場する同僚刑事が 灰田絵奈(はいだ・えな)というなんともヤバい名前www
作者の藤崎さんはもともとお笑い芸人もされていたそうで、ところどころに入れてくるユーモアセンスはさすがです。

プリティが多すぎる(大崎梢)

総合出版社で文芸部門を志望していたのに少女向けファッション誌に配属された南吉くんこと新見佳孝、26歳。女の子の憧れが詰まった誌面は勝手が異なり失敗の連続だが、先輩編集者にカメラマン、スタイリスト、十代の少女モデルたちのプロ精神に触れながら次第に新見は変わっていく――。舞台裏のドラマを描くお仕事成長物語!

Amazonより

大手出版社に文芸部門で働くことを夢見て入社した真面目青年が、全く畑違いのファッション誌に配属されてしまい、プリティの難しさに苦戦しながらも少しずつ成長していく物語。

自分もカメラマンとして若い女の子ばかりの現場に行かなければいけなかったり、話題やセンスが全く合わずに苦労するので、新見さんの気持ちがものすごく分かりました。
最初は新見くんも「この部署で無難に過ごせば文芸に異動できる」くらいにしか思っていませんでしたが、それぞれの部署で高いプロ意識を持って雑誌を作っている人たちがいることを知り、少しずつ変わっていく姿は心を打たれました。

私が大好きな小説家を殺すまで ( 斜線堂有紀  )

突如失踪した人気小説家・遥川悠真。その背景には、彼が今まで誰にも明かさなかった少女の存在があった。 
遥川悠真の小説を愛する少女・幕居梓は、偶然彼に命を救われたことから奇妙な共生関係を結ぶことになる。しかし、遥川が小説を書けなくなったことで事態は一変する。梓は遥川を救う為に彼のゴーストライターになることを決意するが――。
才能を失った天才小説家と彼を救いたかった少女、そして迎える衝撃のラスト! なぜ梓は最愛の小説家を殺さなければならなかったのか?

Amazonより

本屋で見たときに「大好きな」という言葉と「殺すまで」というあまりにも相反する言葉を用いたタイトルに惹かれて買いました。

「殺す」という行為は誰かを直接手にかけるだけでなく、存在理由、生きる意味、社会的価値などさまざまなものを奪うこと。そして「人を深く愛する」ことで最愛の人を殺さざるをえないこと。
「十数万字の完全犯罪。その全てが愛だった」というPOPもそうでしたが、そんな悲しく、どこか美しい想いが交錯する1冊でした。

雰囲気探偵・鬼鶫航( 高里椎奈 ) 

思慮深そうな眼差しに、冷静な物言い。三つ揃いのスーツを着こなして、泰然と構える佇まいは紛れもなく名探偵だ。雰囲気だけは――。鬼鶫探偵社の経理にして相棒の佐々は、彼が謎を解くところを見たことがない。「推理する気はあるのか!?」ヤキモキする佐々を横目に、しかし事件はなぜか鬼鶫の目の前で解決する!

Amazonより

佇まいや雰囲気は完璧な名探偵、しかし実際は相棒も謎を解くところを見たことがない。しかし事件は何故か解決していくという不思議な名探偵のお話。

主人公の探偵が推理をしないので、事件の謎も論理だてて解明されないけど、不思議と事件がすっきりと解決するという斬新かつ新機軸のミステリーです。

一見、出オチ感とユーモアなお話かと思いましたが、最後の第4話で犯人が語った「ありのままに人を受け入れる」というのがこの小説のミソなのかと思います。
日常の中で人のことを考えることやミステリーにおける推理というものは、結局「自分の基準に合わせて何かを判断する」ことだと思うので、自分というものを介さずに依頼者の思いや苦しみを受け入れる今作の探偵は、謎は解けないけれど事件を不思議と解決し、多くの人に愛されているのだと思います。

自意識過剰探偵の事件簿 ( 真摯夜紳士 )

探偵を志す自意識過剰な女子高生、雲雀野八雲。そんな彼女に振り回されながらも、押し付けられた助手役をこなす明義。自称探偵の雲雀野は日常の何でもないことまで事件にしてしまう為、幼馴染の明義は周囲へのフォローに明け暮れる高校生活を送っていた。そんな夏休みを目前に控えたある日、体育倉庫で『難事件』が発生する。二人が繰り広げた事件の全貌は…暗雲立ち込める真実か、あるいは晴れ渡る虚構か。事件を愛しすぎる探偵を助手が騙くらかす新感覚青春ミステリー!

裏表紙より

タイトルを見たときに一瞬「?」となって勢いで買った1冊。

事件と謎を愛するあまり「自意識過剰」となってしまう自称探偵を助手役が上手くだまくらかし、何とか事件を上手く処理するのですが・・・

探偵と助手の関係は古今東西いろいろとありますが、何やかんやこの2人もお互いに足りないところを補い合うパートナーだったのかもしれません。

オタクと家電はつかいよう~ミヤタ電器店の事件簿~( 田中静人  )

「うちの社長は笑いません。ですが、お客さまの笑顔のために努力しています」という求人広告に惹かれ、「ミヤタ電器店」に転職した森野美優。人の気持ちは読めないが、家電に詳しい店長の宮田とともに「なんでも対応」をポリシーに、家電トラブルに隠された人々の想いや悩みを次々と解き明かしていく。一風変わった仕事にやりがいを感じる美優だったが、彼女の周辺で奇妙な事が起き始め…。

裏表紙より

「バカとハサミは使いよう」ならぬ「オタクと家電は使いよう」らしいです。

「人の気持ちは読めないが、家電と街を愛する」店長と「家電のことは分からないが、人の気持ちが分かる」主人公がいいコンビでした。

インターネットのためのルーター、ドライヤー、空気清浄機などの家電のミニトリビアがあるのも密かに勉強になりましたww


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